人気ブログランキングへ

Shining Rhapsody

オリジナル小説の投稿がメインです

264話 閑話 目玉は焼きません5

 
 264話 閑話 目玉は焼きません5

 

「さて。早速成果の確認といこうか?」

「私はハーピーの卵よ!」

 

来たよ。予想してた人も多かったんじゃないかな?鳥と言えば鳥なんだが、見事に人型の魔物だ。しかしすぐには反応しない。何故かって?多分フィーナも似たようなものだからだ。

 

「私はラミアの卵ね。」

「「「「「アウト!!」」」」」

「え?え?何?」

 

一斉に否定され、戸惑いを顕にするフィーナ。どうしてそんな事になったのかと言うと、待っている間に爬虫類はダメだと説明していたから。何故ダメなのかと言うと、蛇の卵は美味しくないから。正確には、蛇の種類によってアタリハズレがある。らしい。

 

つまり、食べるまでわからない事になる。当然作る側が確かめる事になるのだが、オレは自虐趣味など無い。美味しい食材が豊富にあるのだから、態々実験する必要など無いのである。新しい料理の場合は別だけどね。

 

「爬虫類の卵はドボン食材って事にしてたんだ。だからフィーナは罰ゲームね?」

「そんなぁ・・・」

「ナディアも本来はセーフなんだけど、人型は出来れば遠慮したいから仲良くアウトで。」

「な、何でよ!?」

「それ以前に、フィーナを手伝ったでしょ?」

「・・・・・。」

 

沈黙は肯定と同じだ。そしてオレは、用意する罰ゲームの内容を告げる。

 

2人にはオレ達の下に卵が届くまでの数日間、ニワトリの世話をして貰います。」

「「はぁ!?」」

「異論は認めません。」

「「そんな〜!!」」

 

ショックが大きかったのか、その場にへたり込むナディアとフィーナ。ルビアがいない今だから言うが、罰ゲームはご褒美と紙一重なのだ。甲斐甲斐しくニワトリの世話をすれば、取引分よりも多く卵を産むかもしれない。その場合はナディアとフィーナの取り分にしてあげようと思っているのだ。

 

群れを作るラミアとハーピーの卵を集めるくらいだ。かなりの魔物と戦ったはず。その頑張りは認めてあげようと思う。

 

 

 

落ち込む2人を慰め、嫁さん達と談笑しながら待っていると、そのルビアが戻って来た。

 

「お帰り。」

「ただいま。」

 

一応居もしないニワトリを探し回ったルビアを労い、嫁さん達がルビアに結果を報告する。オレは隠し事の出来ない性格なので、その報告、罰ゲームの話題には参加しなかった。会話しなければ指摘もされないだろ?

 

罰ゲームの話を聞き、何やら言いたそうなルビアの視線攻撃を躱していると、ついにカレンが戻って来た。戻って来たのだが・・・ツッコミ所満載なのはどうしようか。最早、オレのボキャブラリーでは的確なツッコミが出来そうにない。

 

「カレンさんカレンさん。オレが何を言いたいか、わかってるよね?」

「えぇ。この卵を持ち歩いているのは、生物がアイテムボックスに入らなかったからです。」

「違うわ!」

 

違わない。違わないのだが、やはり違う。順番に状況を整理しようではないか。

 

 

まず、カレンは剣を抜いている。それは百歩譲って良しとしよう。問題なのは何故剣を抜いているのかだ。剣の側面、腹の部分に何かを乗せているからだろう。だろうって言うか、事実乗せている。ではその何かとは一体何なのか?・・・オレには燃え盛る卵に見える。

 

これは夢だろうか?そう思って辺りを見回してみると、嫁達が揃って口を開けているのが目に入る。どうやら夢ではなさそうだ。・・・じゃあ、あの卵は生き物なのか!?

 

 

「それ、何?」

「何と言われましても、これは鳥の卵ですよ?」

「「「「「鳥・・・」」」」」

 

呆気に摂られた嫁さん達は、カレンの発した単語を復唱する事しか出来なかったらしい。オレは考えを整理すべく、知り得る知識を総動員する。

 

「鳥。脊椎動物亜門の一網に属する動物群の総称。日常語で鳥と呼ばれる動物である。卵は通常、巣に産卵され、親鳥によって抱卵される。ごく稀に、卵が炎に包まれる種族もいるとかいないとか・・・そんな鳥いるかぁぁぁ!!」

「「「「「・・・・・。」」」」」

 

あまりにも常軌を逸した出来事に、解説と独りツッコミをしてしまった。みんなの視線が痛いが、構っている余裕は無い。

 

「色々とおかしいよね!?」

「?」

「アイテムボックスに入らないのは燃えてるからじゃないの!?」

「いいえ、生きているからですよ?」

「「「「「はぁ!?」」」」」

 

みんなも驚きに声を荒げた。どうやら常識ではないらしい。ならば、この燃える非常識は一体何なのだろうか?

 

「何で燃えてるのに生きてるって言えるんだよ!?」

「これがフェニックスの卵だからです。」

「「「「「フェニックス!?」」」」」

 

なるほど!だから燃えてるんだね〜、って誰が納得するかぁ!!

 

「不死鳥と呼ばれるフェニックスですが、死なない訳ではありません。正確には生まれ変わるのです。」

「炎の中に身を焼べて復活するんだろ?」

「え?死の間際に卵へと帰るだけですけど・・・?」

 

死の間際?いや、それよりタイミング良く死ぬもんでもないだろう。つまり・・・

 

「ひょっとしてカレンは、フェニックスを死ぬまで追いやったのか?」

「はい。追い求めて止まない鳥の卵の為です。尊い犠牲でしたね。」

「「「「「・・・・・。」」」」」

 

あまりにも衝撃的な内容に、嫁さん達は言葉すら出ないようだ。だからこそ、夫であるオレがしっかりしなければ。決してツッコミ役に甘んじている訳ではない。

 

「なぁ、カレン?」

「何ですか?」

「今すぐ返して来なさい!」

「え?・・・えぇぇぇぇぇ!?」

「えぇ!?じゃねぇ!!そんなの食えるか!そもそも調理出来んわぁ!!」

「ガーン!」

 

無限に食える卵とでも思ったのだろう。見たこともない程、絶望感満載で落ち込むカレン。それでも叱りつける事数分。観念したカレンは、渋々卵を返しに向かったのであった。

 

探し出すのに時間が掛かったらしいのだが、戻るのは転移ですぐ。数十秒後、見慣れた姿のカレンが帰って来た。

 

 

「あとはティナだな。」

「ティナと言えば、やっぱりドラゴンよね?」

 

どんなイメージなんだと言いたいが、ルビアの言う通りである。ドラゴンハンター(肉の為)と言っても過言ではない。そんなティナが、ついに戻って来た。ニッコニコで。

 

「すみません。食材を集める事に夢中で遅くなりました。」

「ティナは何を集めていたんだ?」

 

今思えば、この時のオレは聞き方を間違えた。何の卵を、と聞くべきだったのだ。

 

「ドラゴンの肉に決まっているではありませんか。」

「決まってるんだ・・・肉?」

「はい!ハンバーグの為に頑張りました!!」

「「「「「・・・・・。」」」」」

 

嫁さん達の視線が冷たさを増した。オレの勘違いだと思ったのだが、どうやらそうではないらしい。だが、まだ答えを出すには早計だ。とりあえず質問を変えてみよう。

 

「ハンバーグの為?」

「そうです!あの重厚感!!溢れる肉汁!!!本能が訴えるのです!ハンバーグこそが至高だと!!」

 

口元にキラリと光るヨダレは多分気のせいだろう。しかしオレも、どうフォローしたら良いのかわからない。ただまぁ、ティナの目的がすり替わった事だけは確かだな。

 

「ティナ・・・何を探しに来たんだっけ?」

「え?それは勿論、ハンバーグの・・・ハンバーグの・・・。」

「ハンバーグの?」

「・・・・・あっ!忘れ物を思い出しました!!」

「ほぉ?何を忘れたんだ?」

「ゆ、夢と希望です!」

「「「「「アホかぁ!」」」」」

 

ティナのでまかせに、全員が揃って声を荒げた。どうやらティナも嘘が吐けない性格らしい。もっとマシな嘘を吐けばいいものを。まぁ、嘘つきよりは数倍マシか。

 

 

結局は呆れ返る嫁達に叱られ、罰ゲームを言い渡されるティナに苦笑していたオレ。しかし変に鋭いティナによって、突然窮地に立たされる事となる。

 

「あれ?」

「何よ?」

「我々が卵を集めなくとも、ルークが地球の食材を手に入れれば良かったのではありませんか?」

「「「「「あっ!?」」」」」

 

やっべ!気付かれた!!これはピンチだ。危険が危ない!逃げるでござる!!

 

「「「「「ルーク?」」」」」

「あれ?」

「いない!?」

「逃げたわね!?」

「追い掛けますよ!」

「「「「「はい!」」」」」

 

 

こうして卵探しはオレ探しとなり数分後、ものの見事に捕まったのであった。どういう訳か、オレまで罰ゲームをさせられたのは言うまでもない。

 

 

オレは悪くないのに!!