262話 SSS級クエスト13
262話 SSS級クエスト13
フィーナ達が懸命にユキを追い掛けている頃。その依頼主はと言うとーー
「やっと追い掛けられるな・・・。」
「2日で済んで良かったじゃない。」
「正確には2日半だけどな。」
時刻は正午を少し回った頃。しみじみと呟いた場所はアームルグ獣王国のダンジョン。その入り口付近である。そして落胆の色を隠せないルークを励ますのはナディア。
「細かい事を気にしてたら疲れるだけよ?」
「そうは言ってもなぁ・・・こうも予定が狂うのは何でだろうな?」
「相手は学園長だもの。仕方ないわね。」
「・・・・・。」
諦めろとばかりに告げるナディアに対し、何か言いた気なルーク。それもそのはず。当初の予定では、フィーナ達がダンジョンに向かった当日に追い掛けるはずだった。しかも単独で。
学園長のせいで2日遅れたものの、今のルークであれば挽回する可能性は高かった。先を急ぐルークに、さらなる予定外が降りかかる。それが今回の同行者達。
「何を呑気にしておるのじゃ!」
「そんな所に突っ立ってないで先を急ぐぞ!」
入り口付近で立ち止まるルークとナディアに振り返り、声を掛けたのはエアとアース。そう、ナディアと行動を共にする竜王達も付いて来たのだ。
元々、姉を解放する目処が立つまでは、このダンジョンを訪れるつもりのなかったナディア。そんな彼女の決意にも似た考えを変えたのが竜王達である。そこには誰もが納得の行く理由があった。
「ご一緒してすみませんね。」
「いや、どうせ断れない理由だし。アクア達は気にしなくていいよ。」
謝罪を口にするアクアに対し、ルークは首を横に振る。
何故ナディア達が同行する事になったのかと言うと、事態はほんの数時間程遡る。
「ふぅ・・・ただいま。」
「おかえりなさい、ルーク。随分と時間が掛かりましたね?」
「学園長が見つからなくてさ・・・。で、今からダンジョンに向かうけど、その前にカレンは何か聞いてる?」
「え〜と、ナディア達が探していましたよ?」
「ナディア達?・・・とりあえずスフィアの所へ行ってみるか。」
時間の無い現状、使用人や自分の足で探すよりもスフィアに聞いた方が数倍早い。テラスで寛ぐカレンと別れ、スフィアの執務室へと足を運んでナディアの居場所を尋ねる。
「ナディアさん達でしたら、遠征の準備に向かっています。直に戻るはずですから、待っていた方が賢いと思いますよ。」
「遠征?ナディアもどっか行くの?」
「ルークと共にダンジョンへ向かうそうです。」
「ふ〜ん・・・は?何で!?」
フィーナ達が向かう際、ナディアにも確認していたのだが、その時は首を横に振っていた。この2日で何があったのか。当然不在だったルークには理解出来ない。
「お姉さんの様子を見に行くそうです。」
「様子?ごめん、意味がわからない。」
「先入観を捨てて・・・と言いたい所ですが、きちんと説明しておきましょうか。」
珍しく察しの悪いルークにアドバイスをしようと思ったスフィアであったが、認識のズレを避けるために自ら説明する事を選んだ。
「まず、今回の世界的な異変による50階層への影響を調べる事が目的となります。」
「影響?・・・そうか、転移出来ない事からダンジョンが変化しているのは確実。結晶化してるとは言え、全く影響が無いとは言えないのか。」
「えぇ。それから竜王達は一度、クリスタルドラゴンを目にしておきたいようです。」
「まぁ、竜王達にしかわからない事もあるだろうな・・・。」
この時点で、ルークが拒む理由は無い。いや、冷たく突き放すのであれば、拒む事は簡単だろう。別々に行動しても問題は無いのだから。一瞬別行動との考えが過るも、それを自身で覆す。
「先行してユキの問題を片付けてもいいけど・・・フィーナ達を信頼してないって捉えられるのもマズイな。それに、今後のオレとナディアなら相性もいいか・・・。」
「相性、ですか?」
「ん?あぁ、獲物を、武器を持たない戦い方という共通点があるからな。ユキに対する抑止力は必要だろ?」
「それは・・・そうですね。」
一瞬カレンの姿が浮かんだスフィアではあるが、すぐさま否定する。ダンジョンへ行きたがらないカレンでは、どうしても不安が残る。何を考えているのか読めないというのも大きいのだが。
「時間はあまり無いけど、この機会にナディアを鍛えるとしよう。」
「そうして頂けると助かります。それと話を戻しますが、ダンジョンの異変が冒険者によるものという可能性もあります。」
「あぁ・・・誰かが50階層へと足を踏み入れたって事か。クリスタルドラゴンを相手に、ナディアの姉をどうにか出来るとは思えないけど・・・可能性はゼロじゃないな。」
「はい。ですから今回、状況確認に向かうそうです。可能であれば、お姉さんの回収も考えているようですが・・・無理はしないとの事でした。」
このようなやり取りの末、ナディア達と合流したルークはダンジョンへと足を踏み入れたのだった。
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あとがき
始めに約1ヶ月も更新が滞ってしまった事、お詫び申し上げます。
仕事では急に忙しい業務を割り当てられ、帰って寝るだけの生活を余儀なくされておりました。加えて親戚が倒れたり出産ラッシュだったりと、大騒ぎの毎日。毎週帰省し、正月も無いようなものでした。
それでもちょっとずつ執筆は続けていたのですが、そのデータも何故かまるごと消え去りました。
頭にきたので、そのまま書き直したりせず大幅に修正してやろうと、ナディアの登場です。深い意味はありません(笑)
実は今回のダンジョン、私の中では非常に重要な位置付けとなります。と言っても、ストーリーに影響がある訳ではありません。何故幼少期をすっ飛ばして進めたのか。その理由が明らかとなるだけのこと。
あと数話、楽しみにお待ち頂けたら幸いです。(その後はこのブログ内で、おバカな幼少期の話を大量にブチ込むつもりです)
今日から2〜3日に1話投稿出来るよう努力しますので、温かく見守っていて下さい。