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Shining Rhapsody

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282話 シュウの失敗

282話 シュウの失敗

 

「何とか窒息せずに済みそうだな。」

「ですが、ボス部屋だけは素通りする訳にもいきませんよ?」

「そうだよなぁ・・・仕方ない、サクッと倒して来るか。」

 

シュウとユキの会話からもわかるように、一行は現在ボス部屋の前に居た。ここまで一切の戦闘も無く、真っ直ぐ上空を突っ切ったのである。ダンジョンを作った者が見たら憤慨しただろうシュウ達の行動だったが、それを咎める者などこの場には居ない。

 

そしてシュウが言ったように、この階層で苦戦するようなボスは居ないと思われた。と言うのも、シュウは今回も鑑定魔法を使用していたのである。

 

 

ある程度ボスの正体を察したシュウは、1人ボス部屋の扉を開けながら呟く。

 

「しかし、この鑑定魔法・・・巫山戯た人物の思考が反映されてるだろ。」

 

◆スノーさん

種族:雪?ゴーレム?

年齢:?

レベル:73

称号:40階層ボス、美白の女王

 

 

恐らくは雪のゴーレムなのだろうソレは、名前からも想像出来るようにスノー○ンに近い姿形をしているはず。そう考えていたシュウの予想は、残念ながら的を得ていた。但し、微妙に違っている部分がある。

 

「・・・スカート履いてやがる!」

 

角ばったゴーレムではなく、大分丸みを帯びたゴーレム。そしてしっかりとスカートを履いていたのだ。故にスノーさん。真っ白な女性という事で、美白の女王である。そんな美白の女王が、シュウの視界を埋め尽くしていた。

 

「しかも何体居るんだよ・・・。レベル73って平均値か?だとすると、冒険者で言う所のSからSSランク相当だよな。このダンジョン、ボスの強さの振れ幅がデタラメ過ぎるだろ。」

 

シュウが文句を言うのも当然である。シュウは数えるのを諦めたが、ゴーレムの数は100体を超えている。単体でレベル70ならばCからBランク相当なのだが、それが10体も居ればランクは1つ上がる。20体ならもう1つ上がる訳ではないが、100体も居れば1つか2つはランクが上がるだろう。

 

ケロベロスは単体だった為、確実にCランク。冒険者の人数にもよるが、Dランクのパーティであれば問題無く倒せる。それが10階層進んだだけでSランク超えなのだから、シュウの苦言も納得である。

 

 

それはともかく、今は目の前の敵である。加えてボス部屋にも雪はある。つまりナディアでなくとも寒いのだ。シュウにとっても持久戦は好ましくない。ならばどうするか。答えは1つしかない。ボスの種族や数に関係なく、それは予め決めていた。その為のソロ討伐である。

 

 

「コレを使うのも久しぶりだな・・・

 

炎よ来たれ

その身は我が矢となり

その身は我が鎧となりて

我が力を贄とし 我が命を聞け

我が力を燃やして 灼熱と化せ

その身は罰を その身は弔いを

眼前を埋め尽くす炎よ

天を焦がせし劫火よ

その全てを包み込め

浄化を齎す高貴な炎よ

この世の全てを焼き尽くせ

 

インフェルノ!』 」

 

 

シュウが放ったのは炎の禁呪。帝国兵を殲滅したソレは、地獄の業火とでも呼ぶべき代物。かつて数キロ四方を焼け野原に変えた恐るべき魔法は、ボス部屋に存在する雪諸共焼き尽くす勢いで広がって行く。

 

ほんの一瞬の出来事だが、この時点でシュウは自らの過ちに気付く。ボス部屋は広いと言っても、精々100メートル四方。その数十倍を焼き尽くす炎は、瞬きする間に行き場を失う。するとどうなるか。答えは簡単、行く場所が無いのだから帰って来るのだ。

 

「え?やべ・・・退避!」

 

全力疾走でボス部屋の扉を開け放つ。当然扉の前にはシュウを待つユキ達の姿があった。しかし今のシュウには彼女達を気遣う余裕など無い。だがユキ達もそれなりの実力者。シュウが見せる必死の形相に異変を察知し、すぐさま扉の横へと避難する。

 

 

この時点で気になるのが、全身を毛布に包まれている人物。周囲の様子など窺い知る事も出来ないのだから、その場に取り残されるのは当然であった。全員がその事に気付くも、時既に遅し。

 

「「「「「あ・・・」」」」」

 

全員が口を大きく開け、只ただ見守る事しか出来ない。

 

 

取り残されたナディアの、不幸にして幸いだった事。それは視界を塞ぎ、地面に這いつくばっていた事だろう。炎は上昇するのだ。ある程度の距離を取っていた事で、ナディアが炎に包まれる事は無かった。無かったのだが・・・

 

「寒い寒い・・・あれ?何だか暖かくなって来た・・・熱っ!!」

 

地獄の業火と形容するだけあって、その温度も凄まじい。数十メートル離れたところで、逃れられるはずがないのだ。勢い良く毛布を放り投げて頭を上げる。その視界に広がるのは灼熱の炎。

 

「ヒィッ!熱っ!!雪、雪!?って無いじゃない!!」

 

耐えきれない程の熱波に、慌てて雪を探すも周囲にあるのは水溜りのみ。周囲の雪など、ナディアが暖かいと思った時には溶けていたのだ。

 

全員が手遅れになる前にナディアを救おうと魔法の準備をしていたのだが、右往左往するナディアの様子に胸を撫で下ろす。

 

「・・・良し!ナディアも暖まったみたいだな!!良かった良かった。」

「「「「・・・・・。」」」」

 

 

苦し紛れの言い訳をするシュウに、誰もが冷ややかな視線を向けるのであった。