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Shining Rhapsody

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314話 侵攻2

 314話 侵攻2

 

 

全員が同時に考え込み、一番最初に答えを導き出したのは学園長だった。とは言え、彼女が教育機関のトップだったからではない。この場に居合わせた者達に、愚かな選択をさせまいとしたからである。

 

(どうする!?・・・いや、迷っていては無駄な犠牲者が出てしまう!やむを得ん!!)

 

最も迂闊な行動を起こしそうな辺境伯へと視線を移し、彼女は声を上げる。

 

「私が話をつけて来る!それまでここで待っておるのじゃ!!」

「が、学園長!?」

 

防壁から身を乗り出した学園長を制止すべく、副隊長が声を掛ける。だが学園長の行動は素早く、彼女はその場から動けなかった。

 

 

十数メートルの高さから飛び降りるも、風魔法によって衝撃を和らげた学園長は、着地と同時に走り出す。みるみるうちに小さくなる学園長の姿を、残された者達は眺める事しか出来なかった。

 

 

 

 

途切れる事なく火球を放ち続けていたルークも、彼女の行動は視認していた。当然こうなる事も想定していた為、特に戸惑うような事はない。ただ予想外だった事が1つ。

 

「あれは・・・学園長か。思っていたより大分早い登場だな。オレの方はこのままだと、あと30分って所か。なかなか思い通りにはいかないもんだな・・・さて、どうするか?」

 

火球を放ちながら愚痴を零す。ルークの予定では、学園長の登場は防壁が壊れる直前か、その直後だった。高い地位の者ほど、時間に縛られるのである。しかしこれはルークがうっかりなだけで、少し考えればわかる事。学園長は、日頃から真面目に仕事をしていないのだから。

 

 

どうすべきか悩んでみるが、大筋で変更は無い。ここで火球の威力を上げるのは簡単だが、それは本人のプライドが許さない。何より、威力を上げるのは最後の手段。相手方が肉の壁を使って来た場合の選択肢である。そうこうしている間に、学園長がルークの下へと辿り着く。

 

「ルーク!やめるのじゃ!!」

「何故だ?」

「防壁への攻撃は敵対行為、宣戦布告と同義なのじゃぞ!」

「宣戦布告ならもうしたぞ?」

「なんじゃと!?」

 

あっけらかんとしたルークの返答に驚く学園長。どうやら本当に知らなかったのだろう。あまりの衝撃に、彼女は口を大きく開けたまま固まってしまった。

 

そんな学園長の様子を気にすることもなく、ルークは火球を放ち続ける。淡々と規則正しく飛んで行く火球を幾つも眺め、学園長が我に返る。

 

「頼むからやめて欲しいのじゃ!」

「・・・何故だ?」

「防壁を破壊するつもりなのじゃろ?それでは困るのじゃ!」

「断る。壊れてもらわなきゃ、オレが困るんでな。」

「なっ!?防壁が無くなれば魔物が押し寄せる!そうなれば多くの者が死ぬ事になるのじゃぞ!?」

「そうだな。・・・それがどうした?」

「っ!?」

 

あまりにも冷酷な言い草に、学園長が言葉を失う。情に訴える作戦が無駄だと悟った瞬間であった。呆然とする学園長に、ルークは容赦のない言葉を投げつける。

 

「恨むのならオレに喧嘩売って来た奴を恨め。それに初めは学園都市の警備に問題があるのかと思っていたが、学園と都市に手引きした者達が居るだろ?」

「それは・・・」

 

各国から王侯貴族の子弟が集う学園である。その警備は王城に匹敵する。それを掻い潜っただけでなく、目撃証言も出ないというのは流石におかしい。かなりの人数が関わっているのは明白であった。

 

仮に実行犯が見つかったとしても、黒幕まで辿り着ける可能性は極めて低い。証人は多いかもしれないが、その分だけ尻尾も切りやすいのだ。

 

 

学園長自身も、それは痛いほどに理解している。責任を感じ、独自に調査してはいたのだが、手掛かりすら掴めずにいたのである。だからこそ、今のままではルークを説得するのは難しいと考える。そうなれば、学園長に出来る事は限られてくる。

 

「ならば・・・私が止めてみせるのじゃ!痛っ!!」

「っ!?」

 

初級魔法とは言え、火球である事に変わりはない。おまけに1キロ先へ到達させるべく、かなりの速度で放たれている。学園長は、それを体で受け止めたのだ。てっきり魔法で相殺するとばかり考えていたルークも、これには驚きを隠せなかった。

 

一瞬『馬鹿なの!?』と考えるも、すぐに思い直す。ここで魔法を使えば、学園長自身がルークに

敵対したとみなされる。ルークの魔法は学園長ではなく、防壁に向けられているのだ。学園も無関係ではないが、まだ直接矛先を向けられた訳ではない。

 

自分に向けられた魔法でない以上、真っ当に迎撃する事は出来ない。それ故に体を張ったのである。これが赤の他人であれば無視して手数を増やす所だが、ユーナの姉ではそうもいかない。悩んだ挙げ句、ルークは足を使う事にしたのだった。

 

「やれやれ。苦労は買ってでもしろと言うが・・・疲れるのは嫌いなんだよな。」

「な、何を・・・」

「止められるといいな?」

「なっ!?」

 

 

棒立ちで魔法を放ち続けていたルークが、ニヤリと笑い駆け出す。まさか走りながらも驚異的な命中精度を維持出来るとは思えず、学園長は疑いつつも防壁へと振り返る。だが彼女の思いとは裏腹に、火球は吸い込まれるように防壁の一点へと向かって行くのだった。