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Shining Rhapsody

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354話 事後処理12

354話 事後処理12

 

 

自分達を放って言い争うルークとティナに、戸惑いを隠せないリノア達。唯一冷静なのはリリエルだった。そんなリリエルにリノアが助けを求める。

 

「リリエルさん!どうすれば良いのでしょう!?」

「う〜ん、放っておけば?夫婦喧嘩はスライムも食わないって言うし」

「ですが、あまり時間が無いのですよね!?」

「それはまぁ、そうだけど・・・」

「止めては頂けませんか?」

「え、無理!」

「何故です!?」

「だって、あんなティナさん見た事無いし・・・怖くない?」

「確かにあそこまで声を張り上げるティナさんも珍しいですが・・・危険は無いと思うんですよ」

 

どんなに感情的になろうと、ルークが嫁に手を上げる事は絶対に無い。だからこそ身の危険は無いのだが、初めて見るティナの様子に断言出来ずにいるリノア。ルークとティナが言い争うのは初めてでもないのだが、それはほとんどの場合がエリド村での出来事だった。故にリノア達が躊躇うのも無理はないだろう。

 

ルークではなくティナに恐れている所が何とも言えないのだが、見ているだけでは収拾がつかないのも事実。そのためリノアはリリエルやクレア、エミリアだけでなく、この村の者達に対しても声を掛ける。

 

「誰か!あの2人を仲裁する、良い方法を思い付きませんか!?」

「あの、自然に収まるまで待ってはいけないのでしょうか?」

「ダメです!夫婦喧嘩に発展したらどうするのですか!?下手したら、この村など一瞬で消し飛んでしまいますよ!」

「「「「「なっ!?」」」」」

 

そんな事は有り得ないのだが、徐々にヒートアップする2人の言い争いに、リノアの妄想もまたヒートアップする。

 

「かくなる上は、私が命懸けでお2人を止めるしか・・・」

「ちょっと落ち着いて!」

「クレアさん・・・何か名案でも浮かびましたか!?」

「そうじゃなくて、ちょっと大げさ!」

「え?」

「少なくともあの2人が力に訴え出る事は無いでしょ!?」

「それは・・・そうですね」

「だから私達は、これからどう行動するかを決めるべきよ。今すぐに」

 

ルークとティナが聞いていないとも限らないため、クレアは口に出さなかったが、あの2人の仲裁は無理と判断した。彼女達では、どちらか一方に加担するのが関の山。その場合の選択肢は自然とティナになるため、後々ルークの機嫌を取る必要がある。だがそれは非常に厄介なのだ。

 

食い物を与えればどうにかなるティナとは異なり、ルークにはあまり欲が無い。仮に嫁達が団結しておだてようにも、頭がキレるせいで一筋縄ではいかない。スフィアかルビア、ティナ辺りなら上手くやるだろうが、頼り過ぎれば慣れて効果が減少してしまう。

 

そうなるとベストな選択は、2人を納得させる事となる。

 

「そうなると、最も現実的なのはここに残る事ですが・・・」

「いいえ、それはヤメておいた方が宜しいかと」

「何故です?」

「先程陛下の挙げられた選択肢で揉めているのですから、どれを選ぼうと解決にはなりません」

 

三択からベストと思われる答えを導き出したかに見えたリノアに対し、エミリアが真っ向から反対する。そう、この場合はどれを選んでも解決には至らない。ティナが説明する前にルークが口を挟んでしまったが、実は三択の中に正解と呼べる物は無いのだから。

 

 

ルークが最初に挙げた城へ帰る。これは言うまでもなく悪手。リリエルという護衛は居るが、まだ帝国内に犯人の仲間が残っている可能性がある。あの手この手でリリエルと分断されたら、リノア達の安全は保証出来ない。いや、そもそも城内で警戒されるのはルークやカレン、それ以外にも実力者が居るからである。そんな者達が揃って不在となれば、良からぬ事を企む者が大胆な行動に出ないとも限らない。

 

しかも城への帰還ともなれば、この村の住人達も連れて行く事になる。一種の恐怖対象であるルークが不在では、混乱するのは間違いないだろう。

 

 

次の獣王国への避難だが、これはリノア達の身を守る点では最適だろう。流石に魔物の群れが獣王国まで到達する事は無いし、リノア達を狙う者達も獣人の警戒網を抜ける事は困難。そこで問題となるのが、この村の住人達だ。

 

自重を辞めたとは言え、ルークは誰にでも転移を披露する訳でもない。そうなると、残された者達が魔物の驚異に晒される恐れがある。彼らには無事リノアに付き従って貰わねばならない。最早リノア達だけ安全な場所に避難すれば良いという話でもないのだ。

 

 

最後のこの場に残る。これが限りなく正解に近いのだが、実は幾つかの不安要素を抱えている。それなりに戦える者達が居るのだが、おそらくは犠牲者が出るだろう。リリエルが殲滅するという方法もあるが、ティナとしては避けたかった。何故なら、リリエルに関しては嫁達全員がお調子者だと認識している。つまりは、やり過ぎるのが確実なのだ。ナディア辺りは直接口にしたかもしれないが、ティナは気を遣ったのである。もっとも、あまりにも必死な今のティナを見れば、いずれ誰かが気付きそうなものなのだが。

 

 

「困りましたね・・・」

「国外で安全な場所があれば良いのですが・・・」

「飛んじゃう?」

「リリエル以外は飛べないわよ・・・」

「あのぉ?」

「「「「?」」」」

 

 

真剣に悩むリノア達に、背後から声を掛ける者があった。この村の住人、その代表と思しき男性である。

 

「でしたら地下を通って、ゆっくり学園都市へ向かわれては如何ですか?皇帝陛下も対処に向かわれるのですよね?」

「「「「・・・それだ(それです)!」」」」

 

 

この場合の最適解は、安全な地下を通り遅れて学園都市に向かう事。冷静な第三者だからこそ、あっさりと導き出せたのだろう。いや、言い争わなければルークもティナもすぐに気付いたはず。

 

 

的確なアドバイスを得たリノア達は、ルークとティナを今すぐ止めるべく、2人の間に夢中で飛び込むのであった。