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Shining Rhapsody

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263話 閑話 目玉は焼きません4

 263話 閑話 目玉は焼きません4

 

 

ルビアを見送り、その場で待つ事数時間。直に夜明けといった時間帯になって、ようやく最初の帰還者が姿を見せる。いや、回答者と表現した方が適切かもしれない。

 

「お帰り。」

「あぁ、ルーク。ただいま戻りました。」

「疲れました〜!」

「加護が無ければ数分と保ちませんでしたね・・・。」

「エリド村が近いからな。それで成果は?」

 

疲れ果てた様子のスフィア、セラ、シェリーに苦笑しつつ、オレは卵がどうだったのかを確認する。

 

コカトリスの巣を発見したのですが・・・」

「私達だと近付くのも一苦労で・・・」

5つしか確保出来ませんでした。」

「そっか。まぁ、上出来なんじゃないか?」

 

流石は常識人グループ。多分オレと出会うまではコカトリスの卵を食していたんだろう。危うく褒めそうになったが、勝手に飛び出して行った事を考慮して辛口評価にしておく。

 

夜通し走り回ったせいか、その場でへたり込む3人。飲み物を渡して労い、オレは次なる回答者を待つ事にした。

 

 

遅れる事十数分。予想通り、戻って来たのはエミリア、クレア、リノアの3人。この3人も常識人なので、特に不安は感じない。

 

「お疲れさん。」

「あ、ルーク様!」

「やりましたよ!」

「大量です!!」

 

満面の笑みでアイテムボックスから今回の成果を取り出す3人。確かに大量なのだが、オレは目の前の光景に思わずツッコむ。

 

「ちっさ!!」

 

ハチドリよりも一回り小ぶりな卵。何コレ!?卵の子供!?とか思ってたら、意外と博学なクレアが答えてくれた。

 

「これはハッチと呼ばれる鳥の卵です!」

「ハッチ?」

 

詳しく聞くと、一応魔物との事。体長3センチ程の鳥で、23ミリの卵を数個産む習性があるとか。温めるのは1個のみで、残りは囮なんだとさ。巣から離れた場所へバラバラに産み落とすから、拾うのに時間が掛かるらしい。

 

「殻ごと食わない限り、食用には適さないと思うんだけど・・・食べられるの?」

「「「え?」」」

「え?」

「「「・・・わかりません。」」」

「わか、え?・・・えぇ!?」

 

これでもか!って程の説明だったから、てっきりクレアは知ってるんだと思ってたのに。追求してみた所、卵と言ったらコカトリス。ここまではちゃんと知ってたらしい。だったらコカトリスを探すと思うのに、想像の斜め上を行くのがオレの嫁。

 

コカトリスは無理だから、とりあえず違う鳥の卵を探そうってなったらしい。でもリノア達がどうにか出来る鳥は此処にいない。で、考えた末、確実に集められるハッチの卵を集めたのだそうだ。

 

「食えない事も無さそうだけど、調理の手間を考えるとなぁ・・・。ギリギリ正解ってところかな?」

「「「ほっ。」」」

 

無駄にならなかったとわかり、胸を撫で下ろす3人。しかし罰は与えなければならない。

 

「けどまぁ、調理の際には3人に殻を割って貰うよ。」

「「「えぇぇぇ!?」」」

 

ミニチュアサイズの卵を100個割れば1人分にはなるだろう。料理人はオレだろうって?嫌だよ、面倒くさい。そもそも男の指で出来る作業じゃない。

 

 

落ち込むリノア達を尻目に、オレは残るメンバーについて考える。ルビアはニワトリ以外、絶対に手を出さないと言っていた。だからルビアは除外しよう。

 

ドキドキさせてくれるのはフィーナ、ナディア、ティナの3名。行動が全く読めないのがリリエル、ユーナ、カレンだろう。即ち、ここからが本番である。

 

 

オレが気を引き締めた時、タイミング良く戻って来た人物の姿が目に入る。

 

「次はユーナか。獲って来たのは何の卵なんだ?」

ジャイアントスパイダーの卵です!」

「「「「「ひぃっ!?」」」」」

「プチプチして、食感が楽しめるんですよ?」

「「「「「きゃぁぁぁ!!」」」」」

「・・・・・。」

 

考えなくもなかったのだが、虫はやめて下さい!嫁さん達がプチパニックなので、このやり取りは割愛。ある種の修羅場だった、とだけ言っておく。学園長の妹と言うより、秘境出身なのが原因だろう。ちなみに親はカニの味らしい。普通の感覚なら、食べようとは思わないな。

 

 

気を取り直して、お次はリリエル。全員アイテムボックスに収納しているので、取り出すまではわからない。はずなんだが・・・

 

「リリエル、は・・・随分と濡れてるみたいだけど?」

「濡れてると言うより、何だかベトベトしていませんか?」

「回収するのに手間取っちゃった!」

 

そう言って取り出された卵は、透明な粘液に包まれていた。卵自体も透明で、中心に黒い球体がある。

 

「これ・・・カエルの卵じゃねぇか!」

「「「「「ぎゃぁぁぁぁぁ!!」」」」」

「ゼリーみたいで美味しそうでしょ?」

「捨てて来なさい!!」

 

完全なパニックなので、こちらも当然割愛。代わりに料理人としての知識を披露すると、カエルの卵は加熱すると全部透明になるらしい。美味いという話も聞いた事はあるが、試した事は無い。

 

爬虫類はダメと言ったが、両生類はノーマークでした。

 

 

残るは比較的まともそうな2人と、やらかしてくれそうな2人。痛む胃を抑えつつ、ふと思った事を呟いた。

 

「しかし見事に被らないな。けど、そろそろネタ切れだろ?」

「「「「「ネタじゃないから!」」」」」

 

森の奥で打ち合わせでもしてるんじゃないかと思っていたが、みんなに叱られてしまった。プンスカしているみんなの機嫌をとっていると、フィーナとナディアが揃って帰還した。

 

「あら?ルークじゃない。」

「来てたのね。」

「・・・あまりにも心配でな。」

 

オレの言葉に、フィーナとナディアが嬉しそうな笑みを浮かべる。違うよ?何の卵を持ち帰るか心配したんだからね?・・・言えないけど。

 

 

さて。この2人は一体どんな卵を持って来たのだろうか?結果如何によっては、嫁さん達全員を労う事も考えるとしよう。え?ティナとカレンが残ってるって?あの2人が最後に残った時点で、完全にネタ要員じゃないか・・・。