258話 SSS級クエスト9
258話 SSS級クエスト9
ダンジョンへと足を踏み入れたアスコット達は、軽やかな足取りで歩き出す。しかし、最後尾を買って出たエレナが、異変に気付いて振り返る。
「師匠?」
「ココは・・・何処?」
「・・・みんな!ちょっと待って!!」
呆然と立ち尽くすフィーナの様子に、先を急いでいるアスコット達を呼び戻した。
「どうした?」
「師匠の様子がおかしいのよ。」
「師匠の?・・・師匠!」
「え?・・・ごめんなさい。ちょっと戸惑っただけよ。」
「「「「「?」」」」」
フィーナが何を言っているのかわからず、全員が揃って首を傾げる。
「前に来た時と違ってたからつい、ね。」
「前と違う?」
「師匠は来た事があるのか?」
フィーナの説明に、当然の疑問を口にしたアスコット。この辺の事情をルークが一切説明していなかったと知り、フィーナは自らが経験した出来事を事細かに話し始めた。
入り口前にてかなりの時間を使ってしまったが、それを責め立てる者はいない。幾ら先を急ぐとは言え、ここはダンジョン。何が待ち受けているのかわからない以上、常に危険が付き纏う。一流の冒険者として長く最前線を歩き続けるエレナ達は、どんな些細な情報も見過ごせないと知っているのだ。
「・・・という訳で、ここは私の知ってる風景じゃないわ。」
「そりゃ、草原どころか砂漠なんだからな。」
そう、アスコットが言うように、眼前に広がるのは草原とは似ても似つかない大量の砂。果ての見えない砂漠である。そして動揺した様子も無く、エレナは早々に答えを導き出す。
「高難易度のダンジョンには、入る度に地形の変化するモノがあるものね。ココもそうだと言う事でしょ?」
「しかし多くの冒険者が足を踏み入れとるんじゃろ?」
「とても高難易度とは思えないわね・・・。」
エレナの導き出した結論に、ランドルフが異を唱える。他の者達も同じだったのか、サラの発言に頷いていた。
「さっさと追い付くつもりでいたけど、考えを変えた方が良さそうね。」
「えぇ。まずは魔物の強さで判断しましょう。」
「なら、まずは警戒しながら進むか。」
アスコットの言葉に、全員の表情が引き締まる。互いに顔を見合わせ、エリド村の住人達が散開して行く。この場に残ったのはエレナとアスコット。連携の全く取れていないフィーナは、全員の行動の意味を問う。
「みんなは何処へ?」
「索敵だよ。」
「魔物を率いて私達の下へ。私が遠距離から攻撃して、万が一の場合はアスコットが救援に向かうの。これが最も警戒した時の狩りの仕方。」
「大丈夫なの?」
接敵した瞬間にやられないのか。魔物を引き連れている最中に追い付かれるのではないか。そう思ったフィーナが心配そうに尋ねる。
「手に負えなそうだったらすぐに引き返すさ。あとは進んで引き返す距離も事前に決めてある。誰かが戻らなければ、すぐに全員で救援に向かえるようにな。」
「流石に手慣れてるわね。」
関心したフィーナの呟きに、エレナが本音を吐露する。
「師匠の場合は、その必要がないものね。羨ましいわ。」
「どういう事?」
「だってルークやカレン様と一緒でしょ?あの2人なら、態々こんな事をする必要ないもの。」
「何も考えずに真っ直ぐ進めばいいんだからな。」
「あぁ・・・それもそうね。」
何が言いたいのか理解したフィーナが、呆れたように呟く。カレンやルークであれば、大抵の魔物は正面から斬り伏せる。その光景が一瞬で浮かんだのだ。
10分後、索敵に向かっていた全員が引き帰して来た。その奥に魔物の姿は無い。魔物がいなかったのか、はたまた到底手に負えない魔物が居たのかが気になったフィーナが尋ねる。
「どうだったの?」
「それが・・・」
「なんと言うか・・・」
「お前達もか?」
「ひょっとして、そっちも?」
言い淀むサラとリューに、ランドルフとターニャが声を上げる。自分達の予想と違った事を悟り、エレナ達は首を傾げながら問い掛ける。
「何か問題があったの?」
「やっぱり高難易度か?」
最悪を想定したエレナとアスコットの問いに、サラは躊躇いながらも口を開く。
「問題というか・・・コボルトとゴブリンがいたのよ。」
「「「っ!?」」」
つい先日の記憶が頭を過り、フィーナ達が息を呑む。しかし斥候に出ていた者達が慌てて否定する。
「ち、違うぞ!」
「そうよ!勘違いしないで!!」
「普通のゴブリンとコボルトだったの!」
「「「え?」」」
普通の。その意味がすぐには理解出来ず、フィーナ達が間抜けな表情で声を上げる。
「引き連れるまでもなく、普通に弱いんだよ。」
「馬鹿馬鹿しくなってすぐ倒しちゃったわ。」
「とても最高難易度とは思えないけどな?」
「初心者向けって言われても信じられるわね。」
警戒して損をした。まるでそう言わんばかりに、全員が感想を口にする。訳がわからないフィーナ達は、眉間に皺を寄せながら顔を見合わせるだけであった。
その少し前。ダンジョンを猛スピードで駆け抜ける女性の姿があった。ユキである。他人と行動していたら決して見せなかったであろう、激情にその身を任せながら。
「牛さんが!牛さんがいなぁぁぁぁぁい!!」
ギルドマスターとの会話もそこそこに、ユキがダンジョンへ急いだのには理由があった。まぁ、説明するまでもないだろう。キングブルという名の巨大な牛肉、いや、牛の魔物である。
こんな事もあろうかとティナはルークに頼み、焼肉のタレを作らせていた。料理の壊滅的な彼女であっても、肉を焼く事は出来る。焦げなければ半生で良い。何なら生でも問題無い。だからこそ、今晩は1人焼肉にしようと思っていたのである。
しかしヨダレを啜りながら訪れてみれば、そこに居たのはとても食えたものではない魔物。彼女が怒り狂ったとしても、責められようはずがない。まんまと目論見の外れたユキは、早い話がキレてしまったのである。
半狂乱の彼女はただ牛肉を求め、過去に類を見ない程の速度でダンジョンを突き進むのであった。
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カスタムURLなんて機能があるんですね。さっき知りました・・・。というわけで、小説投稿サイトにUPしていた過去の小説もブログに引っ越そうと思います。そうすると検索し易くなると思うので。
本編はURLの末尾を『recipe◯◯◯』にするつもりです。(◯の部分は話数ですね)
閑話は・・・やっぱ『dessert◯◯◯』かな?
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