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Shining Rhapsody

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345話 事後処理3

 345話 事後処理3

 

 

時折飛び出す槍や矢を危なげなく躱しながら、ティナは地下通路を急いでいた。慎重に進むルークとは異なり、その速度は少々大胆なようにも見える。だが彼女はかなりの安全マージンをとっている。その理由は、度々現れる岐路での光景を見れば一目瞭然だった。

 

(左と真ん中の道に罠の跡、ここは右ですね。それにしても・・・)

 

思わず声に出しそうになるのを堪え、正解の道を選び出す。楽なのは間違い無いが、散乱する罠の残骸に抱いた感情は呆れだった。ここまでに通り過ぎた分岐点は10を超えただろうか。二択もあれば三択もあった。だがその全てに於いて、ティナは1つも間違う事なく正しい道を選び出している。

 

どういう事かは説明するまでもない。ルークの正解率が0だと言うだけの事。あまりの運の無さに、ルークは寧ろ狙っているのではないかと疑う程だった。だが本人にそのような意図は無い。誰かが追い掛けて来るなど微塵も考えていないのだから、敢えて罠を発動させる必要も無い。本当に運が無いだけである。

 

(流石に一度くらいは正解しないとおかしいと思いますよ?)

 

本人が聞けば甚大なダメージを負うだろう一言を心の中で発し、ティナは正解の道を突き進む。潜入から僅か十数分、ついにルークの影を捉えた。

 

(っ!?これはルークの気配・・・ですが、立ち止まっている?)

 

ルークはその膨大な魔力と神力を抑えているが、完全に消している訳でもない。息を殺し360度警戒しながら進んでいるはずが、ティナが感じ取った気配は普段通りのルーク。絶対的強者の振る舞いとすれば、何らおかしくはないのかもしれない。だがそれならば、ティナが矛盾を感じる事は無かっただろう。

 

敵地で動きを止めるのは、身を潜めるか拘束されるという事。後者はまず有り得ない。ならば前者かと言うと、それでは気配を殺さない理由が説明出来ない。しかもこの時まではルークも気配を消していたのだ。

 

(ルーク以外に感じられる気配もありませんし・・・何かあったのでしょうね)

 

残された理由は不測の事態。そう判断し、ティナは全力で駆け出した。

 

 

「ルーク!」

「ティナか・・・ティナ!?」

 

背後から呼び掛ける声の主。聞き慣れたその声をルークが間違うはずもない。振り返る事なく相手の名を呼んだが、暫しの間を置き振り向いた。その表情は、誰が見ても激しく狼狽している事がわかる。

 

「どうしました?」

「ななな、何でここに!?(まさかアイツら、もう問題を起こしたのか!?)

 

時間的に考えて、ミリエル達が戦闘したとしても1戦目が始まったかどうかだろう。それなのに早くも何か仕出かしたのか。そう思うルークだったが、ティナの答えを聞いて違うと判断する。

 

「何だか胸騒ぎがしまして」

(違う、予感というヤツか!)た、確かに胸は騒がしそうだが・・・」

「はい?(私に対して下品な事を言うとは、相当焦っているみたいですね)

 

動揺と安堵のあまり、ルークの口から飛び出したのは下ネタ。だが騒がしそうな胸と言われたティナは、不思議そうに首を傾げるだけ。完全な失言だったのだが、相手がティナで助かった。そう胸を撫で下ろしたルークなのだが、これは単なる思い違い。他の者であれば苦言を呈して終わりだったのだが、今回ばかりは相手が悪い。全てお見通しのティナである。

 

「い、いや、何でもない(あぶねぇ!焦って素が出ちまったじゃねぇか!!)

「そうですか?(嘘・・・と言うよりは隠し事の類ですかね)

「あぁ、それより胸騒ぎって言うのは?(この話を続けるのは危険だが、急に話題を逸らすのも不自然!聞こえてない可能性もあるし、このまま突き進む!!)

「実は、何か問題が起きそうな気がしてならなかったのです(急な話題の転換を避けましたね。必死に不自然さを誤魔化そうとしているのがバレバレですよ?)

「問題!?ははっ、まるでオレがトラブルメーカーみたいな言い方だなぁ(この反応・・・イケる!バレてないぞ!!)

 

気のせいである。女性というのは、細かい部分もしっかりと見ているのだ。同時に、男とは馬鹿な生き物でもあるのだが。

 

「何もルークの周囲とは言ってませんよ?寧ろリノアさん達の方が、可能性としては高いと思いますし(すみません、嘘です。そしてこの反応・・・隠しているのは1つでは無さそうですね)

「っ!?そ、それもそうだな!(しまったぁ!焦るなオレ!!焦ったら負けだ!!!)

 

否、焦らなくとも負けである。そもそも演技の才能が全く無いのだ。どんなに冷静であろうと、最初から勝ち目など無い。大体、疚しい事など無いのだから隠さなければ良い。下手に誤魔化そうとするからいけないのだ。

 

「ところで、何故立ち止まっていたのですか?(このまま続けても良いですが・・・この辺で一旦脇に置き、気が緩んだところで追求した方が楽に口を割りそうですね)

「そうなんだよ!実は今回の相手に気になる点があってさ!!(ティナの方から話題を変えてくれた!助かったぁ!!)

 

 

ティナの目論見通り、超速攻で気が緩むルーク。この時点でルークの口を割らせる事は可能だが、ティナはもう少し後にする事を決める。学園都市防衛組を思うと、今は11秒を争う事態。下らない隠し事だった場合、取り返しがつかない。

 

何より、全て済んでからであれば嫁達総出で追求出来る。こういう時の為にティナはハーレムを推奨したのだが――最早ルークに出来るのは、これ以上嫁の数を増やさないよう必死に抵抗する事だけであった。