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Shining Rhapsody

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336話 侵攻24

 336話 侵攻24

 

 

思わぬ展開だったのはルークに限っての事ではない。王城から事態を見守る者達も同様であった。

 

「今のは一体・・・」

「な、何が起こった・・・」

「魔法、ではないのか・・・」

 

ルーク以外の全員が倒れ伏す光景に唖然とする国王達。例え気を失っただけにしても、魔法以外の手段が思いつかない。だが彼らが腹を抱えて笑っていたように、ルークの魔力は封じられている。それを画策し、実行させたのは他ならぬこの者達なのだ。だからこそ余計に信じられなかった。

 

「へ、陛下!如何致しますか!?」

「このままでは何れ此処に来てしまいますぞ!?」

 

戦う力を持たない宰相達が慌てふためく。彼らはルークと対峙した瞬間に負けが確定するのだ。冷静な判断を下せない彼らは、ただ縋るべく国王に詰め寄るしかない。だが国王とて同じ事。腕っぷしで掴み取った地位ではない。だからこそ、荒事は誰かに任せるのみ。その相手を探し、キョロキョロと視線を彷徨わせてから案を絞り出す。

 

「こ、近衛兵!今すぐ城門の守りを固めるのだ!!」

「「「「「は?・・・ははっ!」」」」」

 

突然の命令に、事態の飲み込めない近衛兵が呆気に取られる。しかし国王の命令を理解して、全員が足早に退出して行った。護衛を1人も残さずに。だがそれは、万が一の際に盾となる者がいない事でもある。あまりの不安に、宰相は震えながら声を掛けた。

 

「へ、陛下?」

「近衛騎士団が精鋭揃いと言えど、持ち場へ分散していては万が一という事もある。ならば城門に集結させて迎え討った方が良い」

「な、なるほど!」

「流石は陛下!」

「それに設置型の魔道具もある。どの道あのガキは魔法を使えんのだ!はっはっはっ!!」

 

国王の説明に胸を撫で下ろす宰相達。彼らが明るい表情を取り戻す傍らで、1人俯く使用人の姿があった。この城のメイド長を務める女性である。出来る女性である彼女は、当然頭の回転も早い。

 

(魔法を使えないのは此方も同じ。しかも城門から攻め込まなければ、一体どうするおつもりなのでしょう・・・)

 

メイドは決して口を挟まない。職務に忠実な彼女ではあるが、この時ばかりはそれが裏目に出る。とは言うものの、例えどのような手段を採ろうと、結末が変わる事は無いのだが。

 

 

 

一方のルークは、少し前に思い付いた検証を始めようとしていた。

 

「オレが嵌められた魔道具のせいってだけじゃない。その前に撃ち込んだ魔法が掻き消された事を考えても、似たような魔法か魔道具で王都全体が守られてるはず。いや、この魔道具は魔力を封じる物。で、あっちは魔力が霧散する類の物。一度に二つの検証が行える訳だ。」

 

薄っすらと笑みを浮かべながら呟き、ルークは右手に意識を向ける。するとそこには、本来ならば現れるはずのない火球が浮かんだのだった。しかも特大サイズの。

 

「・・・コントロールは難しいけど、一応出たな。と言う事は、文字通り『魔力』を封じる魔道具だった訳だ。で、次は王都になるんだが・・・今は防壁にしとくか」

 

そのまま王城に向けて放てば良いのだが、どういう訳か防壁に向けて火球を放つ。

 

――ドォォォン!

 

火球と言うより爆弾でも放ったかのような爆音と共に、防壁諸共正門が吹き飛ぶ。ルークが思うよりも威力が高かったのは、不慣れな部分が大きい。

 

「力を持て余してるのもあるが、神力で魔法を使うのは慣れないな。まぁともかく、神力には効果が及ばないらしい」

 

そう、ルークが検証しておきたかったのは、魔道具が神力にまで作用するのかという事である。現状神力を使えるのはカレン、ティナ、リリエル達、そしてルビアとなる。だがそれは他の者達に問題があっての事ではない。特に急ぐ必要を感じなかったため、後回しにしているだけなのだ。

 

純粋な神族のカレンとティナ、神力で活動しているリリエル達はともかく。何故ルビアだけ神力を使えるようにしたのかと言うと、ルビアが魔法主体で戦うスタイルだった為だ。そして彼女、それ程強くはない。それなのに仕事上城外へ出向く機会が多いとあって、自衛目的で効率の良い神力へ切り替えたのだ。どうしようもない状況に陥った場合、派手に暴れれば良いと割り切って。

 

ならばスフィアやリノア達もと思うかもしれないが、彼女達はまともに戦う事が出来ない。まともに魔法も使えない以上、下手に大きな力を持つのは危険である。

 

その一方で、ナディアやフィーナ達はそこそこ戦える。だがティナの域にも達していない、名ばかりの元Sランク。そんな状況で、突然大きな変化を伴うのは危険だろう。やるなら腰を据えて取り組まねばならない。持ち前の身体能力だけでカバーしてしまえるティナとは違うのだから。

 

そう言った事情もあり神威解放を行っていない嫁達だが、この一件を踏まえて急ぐべきだろうとルークは考える。

 

「村で訓練してるスフィア達は近日中として、リノア達も出来るだけ急いだ方が良さそうだな。神力を封じるような魔道具・・・神器があるかもしれないけど、魔導具よりは少ないだろう。・・・多分」

 

 

神族にしか効き目の無い魔道具の類は少ない、或いは皆無。ルークは、そんな希望的観測を口にしたのだった。