330話 侵攻18 330話 侵攻18 一方その頃―― 政務に励むスフィアの手が止まる。今日は訓練する雰囲気ではなかった為、全員が地下室へと集合していたのだが――何人かがスフィアの様子に気付いて顔を向けた。 「・・・学園長。昨晩、学園都市が魔物の襲撃に遭った…
329話 侵攻17 329話 侵攻17 翌朝、ルークの姿はエリド村にあった。朝食を終えて一息ついた頃という、少し遅い時間帯。本日の政務が滞るのはマズイという体で、書類がある程度揃うのを待ち全て持参した格好だ。 「――と言う訳で、スフィアには此処で執務をして…
328話 侵攻16 328話 侵攻16 自重はしないと宣言したものの、考えなしに知識を広めるのは別問題。万が一異世界転移組が文明テロを起こしたとしても、それは面倒を見ているシルフィ達の責任。彼女達が何とかするだろうと思うしかなく、ルークに出来るのはこの…
327話 侵攻15 327話 侵攻15 賑やかな晩餐が終わり、一息ついた所でルークが疑問に思っていた事を口にする。 「それで、カレンがオレを夕食に誘った本当の理由は?」 「え?」 「単にみんなで食事を摂ろうと思ったから、ってだけじゃないよな?」 「・・・そ…
326話 侵攻14 326話 侵攻14 ティナから普段のニコニコ微笑む表情が消えた事で、全員が固唾を呑む。視線を集めたティナは、逸していた視線をカレン達へと戻す。 「・・・対応策を相談する前に、済ませておかなければならない事があります。」 「えぇ、時間が…
325話 侵攻13 325話 侵攻13 ほぼ全員が呆気にとられる中、スフィアは思考をフル回転させる。 「(少なく見積もって、とおっしゃいましたね?ルークが何処まで出来るかはその時になってみないとわからないと言う事。ならば今考えるべきは・・・)すみません、カ…
324話 侵攻12 324話 侵攻12 再びエリド村を訪れたカレンだったが、先程の体験を引き摺っていたせいで動き出すことが出来ない。そんなカレンの様子に気付いた者達が慌てて駆け寄る。 「カレンさん!?」 「カレン様、大丈夫ですか!?」 「・・・・・えぇ、す…
323話 侵攻11 323話 侵攻11 あっさりと防壁を破壊し、学園都市を守る兵達の下へと移動したルーク。彼は生き残った傭兵や冒険者、辺境伯の私兵が集まるのを静かに待っていた。 「・・・ん?」 両腕を組んでいたルークは、不審な気配を察知する。 (随分離れた…
322話 侵攻10 322話 侵攻10 カレンが忍び寄ろうとしている頃、ルークは兵士達が普段立ち入れない場所に居た。 「傭兵達が集まるまでに、さっさと見つけ出すとするか。」 今立っている防壁のすぐ内側は貴族街。恐らくは存在するであろう、秘密の出口を探し出…
321話 侵攻9 321話 侵攻9 スフィアと別れたカレンが向かった先は学園都市――ではなく帝国の城内。ここからルークの大まかな位置を特定して移動する事にした。何故そんな回りくどい事をするのかと言うと、いきなり転移してルークと鉢合わせを避ける為である。 …
320話 侵攻8 320話 侵攻8 エリド村へと転移したカレンは、再度スフィアを呼んで状況を説明する。 「大体わかりました。そうなると、明日からは首都を攻めるかもしれませんね。」 「学園都市ではなく?」 「辺境伯、つまり領主を討ったのですから、必要以上の…
319話 侵攻7 319話 侵攻7 ―――まえがき――― 今回、残酷かつ不謹慎と言うか無神経な描写があります。最後まで悩んだのですが、カレンやルークの価値観が人族とは違う事を表現するために書きました。苦手な方は読まない事をお勧めします。 ――――――――― ミーニッツ…
318話 侵攻6 318話 侵攻6 蹂躙劇から数分後、防壁の外に立つのはルークだけとなっていた。とは言っても、全員の命を奪った訳ではない。かなりの人数を撃ち漏らしてした。と言うのも、学園都市内に逃げ込まれたのだ。回り込んで逃げ道を塞ぐ事も出来たのだが…
317話 侵攻5 317話 侵攻5 カイル王国を後にしたカレンは、帝国を飛び越えて学園都市近郊へと足を運んだ。とは言っても予定外の行動。本当に何となく来てみただけである。 「あれは・・・」 特大の火球を乱れ撃つルークの後ろ姿を視界に入れ、次いで傍らに呆…
316話 侵攻4 316話 侵攻4 ルークによる一方的な蹂躙劇が繰り広げられる少し前。帝国内にカレンの姿は無かった。 「さて、いきなり強襲しては人的被害が出ますか・・・少し様子を見るとしましょう。」 そう呟くカレンの現在地はと言うと、万人の予想に反して…
315話 侵攻3 315話 侵攻3 激しく動き回りながらも、火球を間髪入れずに叩き込み続ける皇帝。呆けている暇など無い学園長がその後を追う。彼女が選べる選択肢は2つ。体を張って火球を防ぐか、それを放ち続ける相手を止めるか。どちらにも共通して言える事は、…
314話 侵攻2 314話 侵攻2 全員が同時に考え込み、一番最初に答えを導き出したのは学園長だった。とは言え、彼女が教育機関のトップだったからではない。この場に居合わせた者達に、愚かな選択をさせまいとしたからである。 (どうする!?・・・いや、迷って…
313話 侵攻1 313話 侵攻1 学園都市に起こった異変に、いち早く気付いたのは防壁の上に居た兵士達。 「おい!あれは何だ!?」 「・・・人?」 「どうやって外に出たんだ?」 平野を闊歩する、人らしき者の姿。どの街も門を硬く閉ざしたままの現在、人が歩い…
312話 侵攻作戦5 312話 侵攻作戦5 帝国へと戻ったカレンは、着いて早々溜息を漏らす。 「はぁ。全く彼女達は・・・」 「カレン?」 執務室にて支度中だったルークが、不思議に思って声を掛ける。しかしカレンは、ルークと視線を合わせると首を横に振った。 …
311話 侵攻作戦4 311話 侵攻作戦4 スフィアの意見を聞き、これからどう行動するべきかを考えるカレン。だがそれには、圧倒的影響力を誇る人物の考えが反映されていない。しかしこの場に居ない以上、カレンとしてはどうする事も出来なかった。 「私の行動方針…
310話 侵攻作戦3 310話 侵攻作戦3 カレンが向かった先は、村から少し外れた所にある広場。そこにはエリド村の住人以外の姿もあった。 「皆さんの訓練は順調ですか?」 「カレン様・・・見ての通り順調です。」 呼び掛けられたアスコットがカレンを一瞥してか…
309話 侵攻作戦2 309話 侵攻作戦2 とりあえず魔法を使って衣服と髪を乾かし、ルークは気を取り直してカレンと向き合った。本来であれば真っ先にユーナへと質問を投げ掛けるのだが、戻るのに時間の掛かった理由を尋ねておこうと考えたのだ。 「思ってたより遅…
308話 侵攻作戦1 308話 侵攻作戦1 自身の執務室へと戻ったルークに、帰りを待っていたカレンが声を掛ける。 「おかえりなさい。どうでした?」 「・・・・・。」 「ルーク?」 険しい表情を浮かべて黙り込むルークに、カレンが訝しげに首を傾げる。 「あ、あ…
307話 臨時総会2 307話 臨時総会2 各国の代表が答える事の出来ぬまま、悪戯に時間ばかりが過ぎ去るかに思われた。しかし沈黙を破ったのは、何かと噛み付いて来るラカムス王。 「巫山戯るな!貴族が平民の為に犠牲となれるはずがないだろう!!寧ろ逆ではない…
306話 臨時総会1 306話 臨時総会1 翌日――早朝にも関わらず、各国の代表が一同に介していた。本来ならば昼過ぎに行われる会合なのだが、一刻も早い対応を迫られた者達の思惑によるものである。・・・ある一国を除いて。 「遅い!まだ来んのか!!」 「ラカム…
305話 前代未聞 305話 前代未聞 カレンとの作戦会議を兼ねた昼食の後、ルークは城内に居る役人達を一同に集めた。 「忙しい所、集まって貰った事に感謝する。」 「いえ、陛下が迅速に政務を執り行って下さったお陰で、皆に余裕が出来ましたので。」 感謝を告…
304話 次なる一手 304話 次なる一手 翌日の昼前。執務机に向かって奮闘しているはずのルークは、カレンと共にボーッとしていた。 「・・・平和だな。」 「・・・平和ですね。」 なんのことはない。スフィアを凌ぐスピードで執務を熟し続けた結果、仕事が無く…
303話 種明かし 303話 種明かし 瞬く間に8人の暗殺者を討ち取り、ルークは天井へと視線を移す。その姿にカレンが問い掛ける。 「・・・追いますか?」 カレンは自分が追い掛けるべきか、という意味で尋ねたのだが、ルークの返答は違う意味だった。 「放って…
302話 襲撃 302話 襲撃 ティナ達がエリド村へ行ってから3日後の深夜。ルークとカレンは揃って執務室に居た。ルークは政務の続きを、カレンは紅茶を楽しんでいた。 (・・・どうやら来たようだな) ほとんどの者が寝静まり、巡回する兵士達の足音しか聞こえない…
301話 真意 301話 真意 翌朝、ティナ達をエリド村へ送り届けて執務室に戻ったルーク。政務に取り掛かろうとした彼の下をカレンが訪ねて来た。 「少しよろしいですか?」 「カレンか。何?」 「ティナやスフィアだけでなく、エレナ達まで遠ざけたのは何故です…